2011年9月24日土曜日

ミクさんが新作料理を作る時。第4楽章 - ミクさんの隣

ミクさんの隣
ミクさん探し3日目の朝、寝袋に入って寝ていた私は、KAITOさんの大きな声で目が覚めた。

「ミクー。ミクー。」

私の目に映ったのは、青白い空に青緑の長い髪。
ミクさんは、多くの荷物を抱えて、空を大きく横切っている所だった。

「ミクー。」
「ミクさーん。」

声を張り上げる私達。

「ミクー。帰ってきてくれー。」
「いえ、帰っている所ですよ。あれは。」

「ミクが帰る前に、あの巨大きのこを何とかしないと。」
「その隣にある、大きな瓶も気になりますね。」

私達が話している間に、ミクさんと食材達は見えなくなってしまった。

「ああっ、ミクがー。」
「新作料理確定ですね。」

「大きなきのこ。」
「怪しげな瓶。」

「野生ネギ。」
「正方形のさつま芋、でしょうか。」

「ミクの頭の上にあった、大きな袋の中身は何だろう。」
「分かりません。でも、大収穫だったみたいですね。」

私達は大きく溜息をついてから、これからの事を考える。

ミクさんは、あの食材達を運び終えたら、嬉々として新作料理を作り出すに違いない。
新作料理と聞いて喜んではいけない。
料理が得意では無いミクさんが、誰も見た事の無いような料理を作るのだ。
そして、此処(ここ)にいる彼と私が、得体の知れないミクさんの新作料理を「美味(おい)しく」頂く事になるのだ。

「もはや、手遅れか。」
「帰りましょうか。」

「いやだ。僕は、ここに住む。」
「ここには、葱(ねぎ)しかありませんよ。」

「葱とミクの新作料理なら、葱を選ぶよ。僕は。」

何気に酷(ひど)い事を言うKAITOさん。
もっとも、彼は此処(ここ)に留まる事は出来ない。
なぜなら、此処にはアイスクリームは無いからだ。
その事を指摘すると、彼は途端に帰る気になった。

「早く帰ろう。今すぐに。」

帰宅早々、ミクさんの新作料理を食べる事になってしまったら、私達の身と心が持たない。
到着直後は普通の料理を食べたいと願いながら、彼と私は、長い帰宅の途についた。


**** 管理情報
o 文章作品
o 作品名 = ミクさんが新作料理を作る時。第4楽章
o 分類 = ミクさんの隣
o 作者 = to_dk
o 初出 = 2011-09-24 on Blogger


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